皆既日食

頻脈の発作が起きて以来
ボクの心臓は、まるで別の生き物になったかのように
不快感な鼓動を続け
ボクの内臓にぶら下がっていた。


例えるならば
映画でエイリアンが人間の中に卵を産み
それが孵化していつ食いちぎって飛び出そうかと
身構えているような感じだった。


それからというもの
職場であろうと買い物中であろうと
関係なく発作は起きた。


いつ起こるかわからない不安が
パニック症候群を引き起こすということも
インターネットで調べてわかっていた。
しかし、そんなことなんかどうでもいい。


もっと重大なことがボクの心のなかで起きていた。


厳密にいうとこれが頻脈の原因につながっていたから
関係がなくもなかった。


「仕事に行きたくない」
「つらい」
「調子が悪い」


毎朝、こんな状態で自分自身と格闘しながら出勤していた。
ある夜、耐え切れなくなったボクは実家に電話をした。


「アンタ様子がおかしいよ。頼むから病院へ行って来て。」
親にそう言われた。
自分ではおかしいなんて思っていない。
体調が不調なだけと思い込んでいる。
彼女からのメールにも一言


心療内科で診察を受けて」


もう少しで帰省する予定になっているのに
ボクはどうなってしまったの?
おかしいの?体調が悪いだけなの?
正確な判断が出来なくなっていた。


結局、仕事の関係で1週間後に病院に行くことになったのだが
その間、地元にいるボクの彼女は地元の心療内科を探してくれたりしていた。
なぜ帰省前に病院に行ったのか。
地元に帰省する前に現在の自分を知りたかったから・・・


今になってこんな書き方をしているけど
正確に言うとこの前後の1週間の記憶がない。
覚えていないというかまったく記憶が抜けている。
電話だって何時間もしていたはずなのに。
メールは記録として残っている。
でも、記憶にはない。


そしてボクは、
人生で初めて心療内科に行った・・・